(9日、第107回全国高校野球選手権宮城大会1回戦 仙台東20―2小牛田農林=五回コールド)
12点差で迎えた三回裏、小牛田農林の佐藤愛将選手(3年)が内野安打で出塁した。「3年間ずっと一緒にやってきた愛将と点数を取りたい」。由利佑主将(3年)はそんな決意で打席に立った。
前の打席では、外角の球を振って三振に倒れていた。「内角に来たら絶対に打つ」。6球目を右方向へ運んだ。ボークで二塁に進んでいた佐藤選手を本塁に生還させ、小牛田農林の初得点を挙げた。
「ナイスロー」「この回出るぞー」。最後まで前向きな声かけを絶やさず、守備になると誰よりも早くベンチを飛び出し、全力疾走で守備位置に向かった。昨夏8強の仙台東に及ばなかったものの、佐藤貴司監督は「明るく、一生懸命チームを引っ張ってくれた」とたたえた。
小学校までは剣道に打ち込んでいた由利主将。テレビで東北楽天イーグルスの試合を見ているうちに野球が好きになり、中学校から野球を始めた。
テレビの向こうの舞台だった球場で、仲間とともに最後まで戦い抜いた。試合後、涙をこらえつつ「野球を始めたきっかけとなったこの球場で試合ができたのがうれしかった」と話した。